名古屋市中区にお住いのI(59歳)さまですが、個人事業主として数件のアパート経営をされています。
そしてIさまのご両親が営まれていたお花屋さん、法人Aがありました。ご両親のご年齢や時代背景などからお花の販売はやめてしまい、法人Aは一棟の小さなアパートを所有し不動産収入と不動産を購入した借入金がありました。
お父様(85歳)は会社Aへの貸付金が一億円になっており、今までは、銀行からの借り入れの返済がキャッシュを圧迫し役員報酬はすべて借入の返済に回った結果のようでした。
そこで、ご依頼内容になりますが、今まで、法人税・所得税を安くするような役員報酬の設定にされてきたようですが、結果、一億円の貸付金が相続財産とみなされ、ありもしないお金に相続税が計算されてしまうことにご不安を抱えて相談を受けました。
よくあるケースですが、会社として利益はでていてもキャッシュがなく持ち出しをしているケースがあります。おかしな話ですが、家賃収入はほぼ借入金の返済に充てられるので、現金がないだけで、不動産の返済金額は確実に減り、不動産としては確実に資産として増加しているのです。
今回の教訓は法人税や所得税だけでなく全体を見ないと判断を間違えるというものです。出口(法人税で支払うのか?所得税で支払うのか?はたまた相続税で払うのか?など)をしっかりと考えて対策を講じるべきでした。法人税と相続税の税率を考慮し、どちらで支払えば有効かを定期的に見直していくべき事案です。
そうはいっても一億円を何とかしなければというご相談者さまへのご回答ですが、法人でお持ちの貸付金を贈与税を支払ってでも、贈与する(相続税と贈与税の税率を考慮)。納税する現金はご依頼者様が十分にお持ちでしたので相続税を支払うよう覚悟をしていただくよう促しました。そして、お父様だけでなく、ご依頼者様の相続対策として、アパートの建物だけを法人に売却し、これ以上、ご依頼者様個人の財産を増えないようにし、生活費は役員報酬を取るのではなく、ご依頼者様へ贈与されたお父様からの貸付金の法人Aからの返済によって生活するように、そして、後継者予定者であるご依頼主の長女に少しずつ、アパート経営と株そしてアパート経営者としての覚悟を引き継ぎさせていくことをご提案させていただきました。