賃貸マンション一棟での節税策、見直しの動き – オーナーはどう備える?

目次
最近、「賃貸マンション一棟」を使った相続税の節税スキームが国の見直し対象になる可能性が報じられました。
。国税庁(税務署を統括する機関)は、この手法による過度な節税が行われているとして強い問題意識を示しています。
そこで本稿では、なぜこの節税策が見直されようとしているのか、その背景や問題点、そしてオーナーが取るべき対策についてやさしく解説します。
なぜ見直されるのか?
不動産オーナーの間では、賃貸マンション一棟を購入すると相続税評価額が低く抑えられるため、相続対策に有効だと広く知られてきました。
実際、賃貸中の不動産は「借家権(借りている人の権利)や賃貸による制約」を考慮し、オーナーが自由に使えない財産として評価額が低めに計算される仕組みがあります。
その結果、市場での取引価格に比べて相続税を計算するための評価額が大幅に低くなりがちです。
国税庁はこの「評価額と市場価格の大きな差」が制度の抜け穴になっていると指摘し、問題視しました。
背景には、近年の税制改正で「タワーマンション節税」(高層マンション高層階を使った節税策)が封じられた経緯があります。
タワマン節税の対策として2024年に評価方法が見直されましたが、それは一戸のマンション購入の場合であり、一棟まるごとの購入には適用されなかったため、
2025年11月の政府税制調査会でも国税庁がこの点を取り上げ、「賃貸マンション一棟買い」などを使った節税手法に問題があると正式に指摘しました。
何が問題なのか?
最大の問題は、評価額が実際の市場価値に比べて低すぎることです。
極端な例では、2019年に約21億円で購入した賃貸マンション一棟の相続税評価額が約4億2千万円と算定され、実際の購入額のわずか2割程度でした。
このケースでは本来かかるはずだった相続税が大幅に圧縮されたことが報じられています。
このように市場価格と評価額のギャップを利用することで、一部の富裕層が著しく相続税の負担を減らせてしまう点が公平性の観点で問題視されています。
国税庁も「通達による評価では実態と乖離し適正な課税ができない」という強い懸念を示している状況です。
さらに、この節税スキームが広がることで市場にも歪みが生じかねません。
需要が相続対策目的で集中する結果、こうした一棟物件が実勢より高値で取引される傾向があり、もし入居率が下がれば後継者(相続人)がローン返済や固定資産税の支払いに苦労するリスクもあると国税庁は指摘しています。
節税のつもりが、将来的には経済的負担を増やしてしまう本末転倒な事態にもなりかねないのです。
オーナーがとるべき対策
では、不動産オーナーはこの状況にどう備えるべきでしょうか。まず、現在この一棟マンション節税を検討している方は、今後の制度変更リスクを織り込んでおく必要があります。国の有識者会議では「問題が極めて大きい」「時代に合った内容に更新すべきだ」との意見が出ており、早ければ2026年度の税制改正で何らかの対応策が講じられる可能性があります。
したがって、駆け込みで物件を購入して節税しようとするのは注意が必要です。制度が変われば期待した節税効果が得られないばかりか、高値掴みした不動産が将来の負担になってしまう恐れもあります。
既に一棟物件をお持ちの方も、現在の評価が今後見直される可能性を念頭に置いておきましょう。
評価方法が変われば、相続税額のシミュレーション結果が大きく変わるかもしれません。今のうちに資産の棚卸しを行い、評価額と市場価格の差が大きい物件については、その差が縮まった場合でも納税できる準備をしておくことが大切です。
例えば、納税資金を確保するため生命保険を活用したり、早めの生前贈与で資産を分散しておくことも検討に値します。無理のない範囲で、節税策に頼りすぎない堅実な資産管理を心がけましょう。
税理士としての見解
最後に、税理士としての私の見解をお伝えします。相続税の負担を減らしたいというお気持ちは当然ですが、「効果が大きすぎる節税策」にはそれ相応のリスクが伴うものです。
税制は社会状況に応じて見直しが行われますので、今有効なスキームが将来も使える保証はありません。大切なのは節税ありきではなく、ご家族にとって本当に安心できる相続対策を考えることです。
今回取り上げた一棟マンション節税の件でも、新しい情報が出次第、専門家と一緒に対策を再検討することをおすすめします。
税制度の変更に振り回されないためにも、日頃から信頼できる税理士や専門家に相談し、柔軟に対応できる備えをしておきましょう。
節税と資産承継のバランスを取りつつ、オーナー様ご家族にとって最善のプランを一緒に考えていければ幸いです。
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