2025/05/23
申告漏れ課税価格「954億円」で過去最高──令和5事務年度 相続税調査を読み解く

1.調査結果の全体像
国税庁が公表した令和5事務年度(2024年7月〜2025年6月)の相続税調査では、18,781件の「簡易な接触」により、申告漏れ課税価格が954億円、追徴税額が122億円に達し、平成28事務年度からの公表開始以来いずれも最高値を更新しました。実地調査でも8,556件中84.2%に非違が見つかり、合計追徴額は735億円に上ります。国税庁
2.過去最高となった3つの要因
地価・株価の上昇
首都圏を中心に土地評価額が上がり、相続財産のボリュームが拡大。無申告・海外資産の重点調査
CRS情報や金融機関照会を使い「申告していない財産」が捕捉されやすくなった。AI予測モデルの試験運用
高リスク案件を機械学習で抽出し、効率的に接触件数を増やした結果、申告漏れの絶対額が膨らんだ。
3.数字から読み取れる注意ポイント
項目 | 件数/金額 | 前年度比 | コメント |
---|---|---|---|
簡易接触件数 | 18,781件 | +25.2% | 書面や電話で是正できる軽微案件も広く網羅 |
申告漏れ課税価格 | 954億円 | +39.0% | 金融資産・マンション評価替えの影響大 |
追徴税額合計 | 122億円 | +40.8% | 加算税・延滞税を含む最終負担が増加 |
4.プロが勧める3つの対策
書類は「残す」だけでなく「リンクさせる」
通帳コピーには相続人との資金移動メモを添付し、出所を明示。海外・暗号資産は棚卸しを“英語+日本語”で
外貨ベースの残高証明や取引履歴は日本円換算表も作り、税務署が読みやすい形に。生前整備は「面」で行う
不動産と金融資産を切り離さず、家族信託や法人活用を含めた包括設計を。単発の節税策はAIがパターン検知しやすい。
5.まとめ──「接触」時代の相続税リスク管理
過去最高の申告漏れ額は「相続税は富裕層だけ」という神話を崩しました。
簡易接触の急増は、調査が“選ばれた人”から“気になる人は全員”へ変わりつつある証拠です。
適正申告を守るコツは――
データを揃え、因果関係を示す
専門家のダブルチェックを受ける
申告後も定期的にデータをアップデートする
2025年度以降はAI選定が全面稼働する予定です。今のうちにガバナンスを強化し、“調査に強い相続”を目指しましょう。
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