敵対的相続人対策③
敵対的相続人対策ですが、今回は敵対的な相続人対策を行う側の対策をお話いたします。
今回は長男が、次男に父の財産を積極的に渡さないような対策についてです。
言わば、遺留分対策に近しい対策ではありますが、通常は遺留分を如何に現金で請求された場合には渡せるようにするように、資産を現金にて用意しておくことですが、敵対的相続人対策はそれに加え、積極的に遺留分を減らしていく対策を加えることです。
①まず初めに遺留分を加味した遺言書の作成。
相続が発生した場合には次男には○○銀行△支店の口座をのこりすべての財産を長男に相続させるといったものです。次男に渡す金額は遺留分を計算し、遺留分相当額である必要があります。もし遺言書を作成しなければ、相続の際には分割協議となり、争族に発展します。最低限の対策と言ってよいでしょう。
②意図的に遺留分を減らすために長男が自分の子や配偶者を養子縁組にする。
苗字が変ってしまうリスクや戸籍を汚すことに抵抗がある方には不向きですが、養子縁組することにより、敵対的相続人の遺留分を意図的に減らすことができます。相続税で控除の対象として認められるのは基本養子1人までですが(条件によって変わります)、遺留分対策としては何人でも養子に加えることができます。但し、最高裁 平成29年1月30日判決によると遺留分対策が目的でも無効に養子縁組は無効ななりませんが、真正な縁組の意思がないと養子縁組は無効となります。
③財産を計画的に孫の代に移して特別受益の対象から外す。特別受益の対象にならないように子に早めに財産を移しておく。
孫への贈与は特別受益に当たらないため、贈与税を支払ってでも贈与をすることにより、遺留分を減らすことができます。
※特別受益とは生前にもらった財産も含め相続財産とみなして、公平に分けようとする考え方です。例えば、生前に父から、留学費用で1000万円長男だけ援助してもらった。住宅の建築費用で次男だけ1000蔓延援助してもらったなどです。最近の民法改正により亡くなられるまえの10年間の間の贈与に関してだけ持ち戻すようになっています。
④遺言書の見直し
相続対策は長期戦です。財産の種類や金額も増減していきます。定期的な見直しが必要になるかもしれません。
以上のように長男が計画的に行動に移すには、時間と信用が必要になります。
相続が発生した時点では、次男には打つ手が限られてしまします。そうなれば、父、兄弟の間の人間関係も崩れてしまいます。しっかりと生前に親孝行したいものです。
次回は敵対的相続人対策を行われてしまった次男についてお話させていただきます。
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