相続空き家の特例②~落とし穴~
相続空き家の特例の注意点について
前回に引き続き注意点です。
前回を見たい方はこちらまで
実務上の注意点を引き続きお伝えしていきます。
それでは、事例を交えてお伝えします。実際にあった事例です。
父は5年前他界、父が残した戸建て住宅に母一人で在住していたところ、母の様態が悪くなり相続が発生。子である相続人Aと相続人Bで不動産を相続しました。
幼少から住んでいた思い出のある古家でしたが、不動産屋さんからは3年以内に売れば、相続空き家の特例があるので、ほとんど譲渡所得税はかからないだろうとの提案から売却を決断しすすめていきました。
そして、2年半という時間はかかったものの、値交渉が入り、2800万円での価額になったものの、無事売却ができそうです。3年以内という相続空き家の特例の使えそうなので、一安心。
さて、売却に伴い解体業者に見積もりでも取ろうとしていたところ、買主からの提案で、「戸建ては解体せずに古家付きで購入したい」と提案があり、売主であり、相続人A、Bは「解体費用が浮いたよね」と不動産業者との間で大喜びです。
古家付の土地として売買が成立し確定申告の段階で、相続空き家の特例が使えないことが発覚しました。不動産屋さんの助言により相続空き家の特例が使えるからと売却を決断したのに、譲渡所得税が500万円ほどかかると言われ、不動産業者を訴えました。
何故、相続空き家の特例を使えなかったのでしょうか?
亡くなられた母の居住用財産を3年以内に売却したのです。
「特例は認められてしかるべき・・・あっ!」不動産業者はうなだれました。
ここに落とし穴がありました。昭和56年5月31日以前の建物であれば、特例は使えるのですが、但し、条件があり、耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写しの添付が必要になります。
つまり、建築当時は合法であった建築基準が、度重なる震災によりその都度改正されより厳しくなってきたのです。当時合法であり建築された建物でも、適用を受けたければ、現在の建築性能を示さないと特例は受けさせないということです。
当然、当時の建築基準で建てられた建物にはそのような性能は証明できませんし、耐震工事などする費用は現実的ではありません。
この特例は古家付で売ってはダメなのです。更地としての売却にしなければ、この特例は実質的に使えないのです。
当初は不動産業者も更地での売却を念頭に特例が使えるという案内をして、売却活動を進めていました。更地での売却ならば特例は受けられたのです。
2年半後、買主の「古家付きでほしい」この一言により、不動産業者は特例の要件あるいは特例の存在を忘れ、古家付きで仲介してしまったのでした。
この特例は非常に怖いものです。引きつづきこの特例をします
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