相続空き家の特例③~落とし穴~

相続空き家の特例の注意点について
前回に引き続き注意点です。
前回を見たい方はこちらまで
実務上の注意点を引き続きお伝えしていきます。
それでは、事例を交えてお伝えします。こちらも実際にあった事例です。
父は5年前他界、父が残した戸建て住宅に母一人で在住していたところ、母の様態が悪くなり相続が発生。子である相続人Aと相続人Bで不動産を相続しました。
幼少から住んでいた思い出のある古家でしたが、A、Bは売却を決断しすすめていきました。
そして、当初売出していた満額の1800万円で更地渡しが条件で無事売却ができました。
登記簿謄本を確認すると、父が亡くなった時点で母が相続したと思っていた名義は、父名義のままでありました。
司法書士さんの提案で、「今回の売買では、どっちみち建物は解体しますので、一旦、相続人であるA、Bに名義を移してしまうと費用が掛かるので、お父様名義のままで登記を移さない方がいいですよ」との提案を受けました。
建物:実態 父⇒母⇒子という名義は本来の登記
提案 父⇒登記はそのまま解体へ
土地:実態 父⇒母⇒子という名義は本来の登記
提案 父⇒子という中間を省略
実務においてはよくある提案ですし、売主さんの負担を減らすためにはいい提案ではありますが、
ここで、税理士のストップがかかりました。
「相続空き家の特例がこのままでは使えなくなるのでは」ということです。
相続空き家の特例が適用され、200万円ほどの税金の節税ができました。
相続空き家の特例とは、母が所有して居住していた土地建物に対して、流動性を担保するために3年以内に売却するのであれば、3,000万円の控除を認めてあげましょうといった建付けです。
それでは、母が所有していたかどうかはどのように税務署側は判別するのでしょうか?
それは、税務署は登記簿謄本に名前が載っているか否かによって所有者か否かの判別をしています。
だからこそ、申告書の添付資料として登記簿謄本の提出を求めているのです。
相続空き家の特例を使いたいのであれば、登記が無駄なようではありますが、母に一旦、経由しているという登記が必要になりそれを省いてしまっては、証明がしにくくなってしまいます。
税理士は通常、確定申告時に係るものですので、申告の段階に係ることが多いのですが、契約から登記の段階では係ることがなく未然に防ぐことができません。この方は、顧問先であったために気づくことができた案件でした。この特例は非常に怖いものです。引きつづきこの特例をします
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